インディアンポーカー

服を着たおすもうさんの映像ばかりで埒が明かないので、ひとつ医療に奇策はないものか、ひねもす思案した・・・ふと空前絶後かつ超絶怒涛な計画を思いついた、いえーい! いっそこの世から鏡とカメラをなくしてしまう。即ち自分の顔を認識する術がなくなるのである。そもそも自分の顔を認識できる生き物など人間ぐらいしかいないんだから、美しく加工したお顔をインスタに上げられなくなったからといって文句を言うのは筋違いである。さて、よもや自分は不細工なんではなかろうかという突然の強迫観念にかられると人はどうするのだろうか。化粧はできなくなり当座とりあえず美容院へ行き、はたまた思い切って美容整形にトライする。しかしその出来栄えを実感できないとなると今度は第三者の厳しい目をもってそれを確認することになる。そこで新手の商売が発生する。”正直の店、おだて屋”だ。自分が本当に容姿端麗にになったのかをこの店で確認するのだ。「あら、あなた稲刈正雄さんにそっくりねえ」「君まじマブいね。昔のキャロライーン洋子にクリソツだぜ」と言われホッとするのである。その後よせばいいのに上野駅前でダメ押しとばかりに似顔絵まで描いてもらう。するとそこには稲刈正雄ではなくナイパチーノが、キャロライーン洋子ではなくヨシナガーン小百合が描かれている・・・ん?そこでようやく気付くのだ。すべてが虚構なんだと。つまり皆お互いが相手を慮り忖度(そんたく)し合っているだけなんだと。そしてキャンパスに描かれたものこそまさしく偽りの美、“忖度映え”なんだと。ますます疑心暗鬼になると最後に信用できるのは自分の目である。見えもしない顔面への執着など忘却の彼方に捨て去り、そこに確認できるのはただ首から尾側かつ腹側面だけとなる。なお触覚は嘘をつかない。すると街中には有酸素運動の鬼がひしめき、筋トレグッズ、ササミチキンが馬鹿売れし、かのT大ボディビル部は復興を遂げる。女性はシンボルであるバストの自己触診に余念がない。こうして生活習慣病はいつしか淘汰され、増え続ける乳がんでさえもすべて早期発見にて撲滅される。これぞまさしく国民総筋肉、天寿マッチョう、いや全う計画の全貌である。 
(個人の意見です)

2017年12月23日