便秘
ミニチュアダックスのキャンディ(以後Cとする)をつれて堤防をドライブしてみました。麗らかな秋の風が心地よかったものですから窓を全開にし上半身を乗り出したCを肩にのせお互い有頂天になっておりました。すでに暴挙でございます。普段ろくすぽ散歩もしないCはグランドの野球少年たちを見、また生まれて初めての川を目の当たりにとても感動しているようでした。その様はあたかも初めて海を見て涙を流すブッシュマンを彷彿とさせるものでございました。興奮してきたCは大喜びの体で尻尾を直立させ、やおら腹部をよじって歓喜の踊りを始めました。遠くに富士、目の前に肛門、こりゃコントラストがあってなかなか乙なものじゃわい、と悦に入るやいなや目の前にポロリと何かが落ちてまいりました。まさか・・そういえばCは便秘だったのです。受動的な腹部圧迫が腸蠕動の口火を切ったのでございます。イントロも束の間、ポロポロとBrown
Sugarが飛び出てきます。それはもう臭いの臭くないのといったらございません。Cは申し訳なく思ったのかこちらを振り向き、視線が合った刹那「パパ、あたいは幸せよ」とおそらく言ったのでしょう。それで免罪符を得たつもりなのかCはいよいよ本気を出してまいりました。8ビート、ロケンロール、調子の良い鍛冶屋といったところでしょうか。驚愕、悪臭のあまり不覚にもハンドルを揺らしてしまいました。すると後ろからおそらくヨン様、いやヤン様が激しくあおってくるではありませんか。恐怖、屈辱のあまり今度はアクセルを踏み込んでしまいました。前方の車にすんでのところまで接近し、見ると金色に輝く8が4つも並ぶこちらもおそらくヨン様、いやヤン様とお見受けいたしました。如露亦如電※、人生これまでかと地団駄を踏み、愚図りだした私をCは喜んでいると錯覚したのでしょうか、今度はポロからニョロへとやんわりひねりを加えてきやがりました。「パパ、あたいのS状結腸の形どう?」。死を覚悟した人間にはもはやそんな戯言など到底耳には入りますまい。走馬灯の序でに一瞬未来を垣間見ました。とくダネ!「ウン転中にウンを浴びるもウン良く軽傷ですんだようです(嘲笑)。どうせこれまた中国でしょ?(失笑)」
結語 頑固な便秘に対し運転中の腹部マッサージが著効した稀有な1例を経験した
如露亦如電【にょろやくにょでん】:「人の命は露の如く儚く、稲妻のごとく一瞬で消え去る」という意味